——では、ここからは新卒社員とOJTとがどのように二人三脚で進んでいったのかお聞きしていきたいと思います。「目標が定まっていない」ところからのスタートだったというお話ですが、どのように進めていったのでしょうか。
唐鎌:まずやったのは、ざっくばらんなコミュニケーションです。互いの人となりを知ることで、気軽にコミュニケーションを取れる関係性を築きたいという想いがありました。次にやったのが、スキルの可視化ですね。どこが苦手なのか、どこができているのかをスキルチェックシートで可視化し、克服したいところ、伸ばしたいところを共通認識できるようにしました。
——先ほど「1個1個小さな目標を立てた」というお話もありましたが、こちらに関してはいかがでしょうか。
唐鎌:目標設定をし、それに対して「できた」「できなかった」を定性ではなく定量で振り返れるシートを作成し、報告、振り返りを行うようにしていました。定量的に出すことで「なんとなくできた」「なんとなくできなかった」にならず、具体的に振り返れるようにしたという感じですね。

※イベント時に投影した唐鎌さんの育成ポイント
——安藤さんにとって、こうした指導やアドバイスはいかがでしたか?
安藤:良かったです。たとえば、商談をどれぐらい取りたいのかという目標に対して、架電数はどれぐらいなのか、1架電あたりにかかった時間は何分なのかなど、項目に分けて定量化しているため、振り返るときに「じゃあ、次は架電件数を増やそう」とか「1架電あたりの時間をもう少し短縮したほうがいいのでは」といったように、次のアクションを決めていきやすかったなと。
——お互いに日々の業務に追われていると、タイミングを合わせて振り返ることが難しいときもあったのではないかと思うのですが、何か工夫はされていたのでしょうか。
唐鎌:特に大変だったという感覚はないですね。毎日、夕会をやっていて、その延長で振り返るようにしていましたので。わざわざ振り返りのために時間を取るというより、日々のコミュニケーションツールのひとつとしてスキルチェックシートを活用していたという感じです。振り返りを月次にしてしまうと、自分が何をやっていたのか忘れてしまうと思うんですよ。なので、日次がベストで、最低でも週単位で「今週はこれができた、これができなかった」と振り返ることが大切だと思っています。目先の目標を1個1個クリアしているイメージが持てることも大事だなと。
安藤:月次だと「今月、何やってたっけ?」と曖昧になってしまったんじゃないかと思います。項目が細かく分かれているのですが、やったタイミングで入力していくよう習慣化していたので、振り返り前にわざわざ何か別に用意しなければならないこともなく、負担感はなかったです。
——振り返る際、唐鎌さんが意識されていたことはありますか?
唐鎌:否定は絶対にしないことですね。認識にずれがあったら指摘してほしいのですが(笑)。否定するのではなく、なぜできなかったのかを一緒に分解していこうというスタンスで接してきたつもりです。
安藤:大丈夫です、ずれはありません(笑)。最初は「なんとなくできない」という認識だったものが、要素を分解して考えていくことで「なぜできないのか」と具体化され、解決できるようになっていったなと思います。あと、やったほうがいいことに関しては、「次から必ず変えよう」というものと、「これは長期的に変えていこう」「これはやってもやらなくてもどちらでもOK」と、濃淡を分けて伝えていただけたのが吸収しやすかった理由かなと思いました。
——逆に安藤さんが意識してきたことについても伺いたいです。
安藤:やってきたことはPDCAに近く、インプットをしてアウトプットし、それに対して唐鎌さん始め先輩方からフィードバックをもらい、それを元にアクションするの繰り返しでした。インプットする際は、とにかくわからないことがあれば聞きに行くこと。特に最初は自分で調べようにも前提知識が不足しているため、ほぼ知識ゼロの状態で聞きに行ったこともあります(笑)。
唐鎌:OJT側としては「もっと迷惑をかけていい」「遠慮はしなくていい」と私は思ってます。一定の配慮は必要だと思いますが、「こんな質問をしていいのかな」とか「時間を割いてもらうのが申し訳ない」とか思う必要はないです。OJTや先輩がいる理由は、後輩に良い方向に進んでもらうためだと思うので、遠慮せず時間を奪ってほしい。私は質問しやすいよう、あえて忙しくないふりをしたりしていました。
安藤:聞きやすい雰囲気だったのは、あえてだったんですね(笑)。唐鎌さんは返答もかなり早く、非常にありがたかったです。先輩にフィードバックをもらうことは本当に大事で、研修で得た知識や業務で得た情報などを、全社員が閲覧できるSlack(個人日報みたいなもの)にて発信していました。そして、それを見てくださった先輩方から更にフィードバックをもらえるので、認識が誤っていることへの指摘や、「それだったらこういう役立つものがあるよ」という教えやアドバイスのコメントが入るのがとてもありがたかったです。

※イベント時に投影した安藤さんの仕事に向き合う際のアクション方法
——その他、唐鎌さんとのやり取りで安藤さんの印象に残っていることはありますか?
安藤:同期が先に受注を決めた時のやり取りですね。つい焦ってしまったのですが、「方向性は間違っていないから、そのままやっていこう」とフォローしていただいたおかげで、自信を持ってそのまま頑張れました。感謝しています。
唐鎌:今、足りていないことを話し合いながら1個ずつ進める。やるべきことに変わりはないと思っていました。
——あらためて、唐鎌さんのOJTとしての関わり方について、安藤さんに感想をお聞きしたいです。
安藤:1番大きかったなと思うのは、フィードバックの内容や教えてもらったことに一貫性があったことですね。あらためて振り返ると、発言にずっと1本の筋が通っていて、だからこそ吸収できたのかなと思います。
唐鎌:最初に2人で設定した「1年後の目指す姿」に向かって、安藤くんが着実に進んでこられたことの表れだと思います。